どうも、赤錆です。
最近更新が滞ってしまってすいません……。いやはや、家で実験をやってると実質休日が無いのと同等なので疲れてしまって……。
さて、実験なのですが。凍結真空乾燥です。
最近家で凍結真空乾燥の実験をやっております。いわゆるフリーズドライというやつですね。最近は味噌汁のフリーズドライだったり、カップヌードルのエビとかなんかもそうですね。
じゃあそれどうやって作るのか? と言うと案外簡単です。
①フリーズドライにしたいものを凍らせる。
②凍らせたまま真空環境にする。
③温度を上げて水を乾燥させる。
ぱっと書くとこれだけですが、ここで結構物理・化学の概念が絡んできます。
かんたーんに説明しましょう。
まずみなさん、水は0℃で凍って100℃で沸騰することはご存知でしょう。ここは良いですね?
ただし、これはあくまで、大気圧中の話になります。大気圧というのは、101325Paです。1.01325×10^5としてもわかりやすいですね。
ここで三相図というのを見てみましょう。
(長野県南信工科短期大学校のHPより引用させていただきます。http://www.nanshinkotan.ac.jp/archives/2745)
さて、この図は縦軸が圧力、横軸が温度となっています。ではまず縦軸の1気圧とあるところを見てみましょう。
1気圧のところから、D点までいけるでしょう。その上の方に、氷(固相)とあります。これは、この領域内の条件の時は氷ですよ~ということです。左端からD点までですね。
ではD点の温度はどうでしょう? D点から下にたどっていくと……温度のところは0℃となっています。
つまり、0℃までは氷だということです! つまりは融点ですねー。
では、温度を上げてみましょう。D点から右へ進めると……水(液相)の領域に入ってきました。つまり0℃を超えると水です! そしてB点まで水のようですが、B点は何度でしょう? 下に行ってみると、100℃とあります。
B点、100℃を超えると水蒸気(気相)に入るので、100℃は沸点ということになりますね!
どうでしょう? 大気圧での挙動が少しは分かったでしょうか?
さて、では他の圧力……たとえば富士山の上とかどうでしょう?
富士山の上は空気が薄いですね。これは高いところにあるからです。空気が薄いというのは、圧力が低いということです。のしかかってくる空気の量が少ないからですねー。
圧力が低いと、先ほどの図を見るとどうなるでしょう? この辺……この辺を見ましょう。
赤い線を引いてみました。E点とF点が交わっている点です。
そうすると、F点……つまり沸騰する温度が下がるのが分かりませんか? 少なくとも100℃以下で沸騰しています。水から水蒸気に変わっていますね? これが、富士山の上では低い温度で沸騰する理由になります。
そういうわけなので、富士山の上でカップ麺を作ると、80℃くらいで沸騰するのでちょっとぬるく感じてしまいますね。
では、さらに圧力を下げてみましょう。圧力がとても低いと、それは真空と呼ばれる領域になります。一般的には真空パック、なんかはみんな知っていますね。空気が無い状態、ととってもらっても構いません。
実際には空気がない状態は作れませんけど……まぁそこは専門家の領域ということで。
ここで、不思議なことが起こります。よく見てください、通っている線が水(液相)の領域を横切っていないではないですか! しかしこれは正しいのです。この場合は、氷からいきなり水蒸気へと変化するという不思議なことが起こります。これを昇華と呼びます。
ドライアイスとかはそうですよね、ドライアイスはびちゃびちゃになることなく、気体の二酸化炭素へ変化していきます。同じことです。
しかもよく見てください。この氷→水蒸気への昇華は、0℃以下で起こります。つまり、乾燥させるのに高温が必要ないということです。これは非常に便利で、熱を掛けたくないものから水分を取り除くのに大いに役立ちます。
このように、真空中では、氷から水蒸気へ直接昇華さえ、かつ低温での乾燥が可能となるわけです。これをフリーズドライ技術、日本語では凍結真空乾燥技術と言います。
これは非常にすごい技術でして、特徴をあげると、
①形を維持したまま乾燥可能
②熱を掛けずに乾燥可能
という2点が素晴らしいところです。
形を維持する、ということはどういうことかと言いますと、みなさん味噌汁のフリーズドライを見たことありませんか? 四角い塊の味噌汁の乾燥物があって、お湯をいれると戻るやつです。あれは形を維持しているからできることです。
ためしに普通に味噌汁を乾燥させてみてください。多分ですが、お椀の底の方に味噌の塊が泥のように貯まるはずです。凝集して密度も高くなりますので、これにお湯をいれてもなかなか溶けてくれません。
次に熱を掛けずに乾燥できる。これに関しては、どちらかというと製薬の分野で役に立ちます。
熱を掛けないということなので、タンパク質や薬品の効能を損なうことなく乾燥できるのです。
さて、こういう化学の知識を使って、フリーズドライは作られているという話です。難しいですね? まぁ真空は得てして難しいものですので、興味のある
方は是非勉強してみてくださいー。
閑話休題。本題へ。
家でこのフリーズドライが作れるようになりました!
装置はこちら!
この装置の中に凍らせた食べ物とかを入れ、真空に引くことで真空凍結乾燥ができます!
飛ばした水分はコールドトラップで回収。コールドトラップというのは、冷却面を作って、そこに水蒸気を氷として貯めておくものです。この装置ではドライアイスを使って冷やしています。
ここが曲者で……ドライアイス、1時間に1回補充が要るんですよね。あとドライアイス結構高いんですよね……。
あと加熱機構もあります。実は凍らせて真空に引くと氷は水蒸気へ昇華はするんですが、昇華熱というものにより、熱が奪われていきます。するとあっという間に-35℃とかそのぐらいまで冷えてしまうのです。冷えると昇華はしてくれないので、加熱してやる必要があります。
一応この装置では、30℃程度までは加熱できます。え、パワーが弱い? ヒーターを中に入れ込めればいいんですが、予算の都合上外からの加熱なので仕方ないのです……。
まぁなにはともあれ、この装置でフリーズドライが作れるのです! 長々と書きましたが、作れるんです!
そこで、まずはパイナップルのフリーズドライを作ってみました!
いやー、パイナップルはですね……缶詰のを使ったのですが、糖分が非常に多い。糖分多いと乾燥が非常にしづらいんですよね。いやはや、苦労しました。
会社の人達に食べてもらいましたが、好評でしたね。私はパイナップル苦手なので上手さが分かりませんが(オイ
こちらは買ってきたサバの照り焼きを切ってフリーズドライにしました。
保存性重視できっちり乾燥させたのでぱさぱさ……ではあるんですが、味が濃縮されるのか、実にご飯やお酒に合いそうな感じに。あとはあれですね、ご飯に乗せてお茶漬けなんかも……。
もう少し味が濃いともっとよさそうだったので、塩サバを買うべきでしたねぇ。もし次やるなら塩サバです。
それで、なぜこれを私が作っているのかといいますと、今週末に高校生が研究所の見学に来るんですよ。折角だしフリーズドライを実際に見て、食べてもらおうかなと。
頑張りました。とても頑張ったので!
そんな感じでー。あぁ、elonaやお絵かきもしたいなー。
ではー。
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