小説

知里弥生の無気力日和

小説:胡蝶の夢

 人を好きになるとは、とても簡単だ。「――ふぅ」 黒髪の女性は、陶磁器のような黒い腕で頬を撫でた。血の通わない無機質な感触が、暑いこの日は心地よい。 兎に角、胸が痛いようだ。痛いらしい。曖昧。 思いついたようにすっくと立ち上がり、投げ捨て気...
知里弥生の無気力日和

小説:新月

私があの施設から逃げ出せたのは幸運だった。走った。転んだ。隠れた。追いかけてくる黒服の目をすり抜け、迷彩服の男達の手を避けた。この日、月が出ていなかったのは僥倖であっただろう。傷は無かった。無かったことになっていた。当然だった。成長等無い。...
知里弥生の無気力日和

霧崎流娜の沼津漫遊記

※この話は一部フィクションです。 空模様は上々。気温は程よく過ごしやすい。この気温が程よいと言うのは重要で、年がら年中和服を着ている私にはとてもとても影響が大きい。特に寒い場合には上着を羽織らなければならない。「上着があると思い切り動けない...
知里弥生の無気力日和

小説:善と悪

「善と悪ってなにかしらね」  薄暗い空間で緑茶を冷ましていた巫女――霧崎沙娜は、ぽつりとそう呟いた。 「なんじゃ、下らぬ事を考えるのぅ」 「下らなくないわよ。人間にとっては重要じゃない?」  無彩色の巫女――三好零は呵々と嗤う。そう...
知里弥生の無気力日和

小説:鍋

※この小説はフィクションです。 非常に重大な事態になった。四人の人間が机を囲んで各々表情を歪めている。「……どうしてこうなったのよ」「いや、うん。何かごめん」「うあー、どうしようどうしよう!? このままじゃいかんとですよー!?」「カカッ、こ...
知里弥生の無気力日和

小説:タイプライター

※この小説はフィクションです。  夕暮れ時である。日か翳り気温は一層下がり、大勢の人間が肩を竦めながら足早に帰路に着く。その中に一人、黒いコートに身を隠して機嫌の悪そうな足取りで歩く女性が一人。  彼女は手近な書店を見つけると、...
知里弥生の無気力日和

小説:ニドヘグ

※この小説はフィクションです。 霧崎神社という、由緒正しき神社がある。  K大学の付近にある神社だ。代々霧崎家が管理するその土地に、ぽつんと建てられた小さな神社である。  きちんとした神社であるので、勿論施設は一通...
知里弥生の無気力日和

小説:鈍感

黒無陣矢は、自らの置かれている状況を把握できていない。 そもそも、自分が今どうなっていて、どのように思われていて、どのように行動するべきか、それを理解している人間が果たしてどれほど存在するのだろうか。 少なくとも、ただ日常を漠然...
知里弥生の無気力日和

小説:檻

ふと、独りで考え事をしたい時がある。 ふらりと研究室を抜け出し、外へ。新月の夜は暗く、蜘蛛の巣の掛かった明かりが薄暗く辺りを照らしている。 静寂だ。 この深夜、大学に居る者は殆ど居ない。人の気が無い。それはある意味で非日常をひしひしと...
知里弥生の無気力日和

小説:古本屋

※この小説はフィクションです。 大きな竹林がある。 K大学の周辺である。これでもかと言うぐらい広大な竹林があるのだ。青々とした竹は天高く伸び、風に揺れてざわざわと騒ぎ立てる。 竹林の中は不明瞭であった。 こういった場所には噂話が...
知里弥生の無気力日和

小説:雑談

※この話はフィクションです。 二人の男が、大学キャンパス内のベンチに座って喋っている。 「なぁ、おい。お前好きな人いるか?」 「何だよ藪から棒に」 「いや、単純に気になっただけで」 「そういうお前はどうなんだ。言い出しっぺがま...
知里弥生の無気力日和

小説:朦朧

※この小説はフィクションです。 ゆらり。 地面が揺れているのか。田圃が波立ち、木々がぐらつく。 ゆらり。 足を広げて踏ん張ってみる。身体は支えきれず、フェンスに体重を預けてしまう。 ゆらり。 身体がずり落ち、地面に落ち込んだ...
知里弥生の無気力日和

小説:弾けて

※この小説はノンフィクションです。 深夜。ぼんやりとした靄のような光が昏い空に浮かび、昏いのか昏くないのかが非常に曖昧だ。逢魔が時をそのまま丑の刻まで持ってきたような、そんな印象。 「……全く」 周囲は田園だ。そうでなければ牛舎だ...
elonaで冒険

elonaで冒険その49.5 ~大寒波と第50回直前記念

※プレイ日記ではありません。 ※今までの『elonaで冒険』記事を読んでキャラクターを把握していないと分からなかったりします。ご了承下さい。 ポート・カプールには珍しく、大雪が降っている。大寒波がノースティリスを覆い、かつて無い...
知里弥生の無気力日和

小説:四月馬鹿

※最早エイプリルフールは過ぎてますが、4月1日は忙しかった上に自宅にネットがなかったので。あと学会要旨詰まったから気分転換に書いただけなので適当です。 ※この小説はフィクションです。 四月一日である。今年度も終わり、明日からは新しい...
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