elonaで冒険その49.5 ~大寒波と第50回直前記念

elonaで冒険 小説

※プレイ日記ではありません。
※今までの『elonaで冒険』記事を読んでキャラクターを把握していないと分からなかったりします。ご了承下さい。

ポート・カプールには珍しく、大雪が降っている。大寒波がノースティリスを覆い、かつて無いほどの積雪が多くの冒険者を阻んでいる。
オーロラリングですら突破できないような降雪に、ルスト一行は自宅避難を強いられていた。久々の休暇である。
「ふあうー。おこたぬくぬく」
黄金の騎士の膝の上で、猫の妖精は間抜けな声を出した。その妖精猫がぽかんと開けた口に蜜柑を放り込み、黄金の騎士はほうと息を吐く。
「炬燵で蜜柑はやはり良いですね。イルヴァには夏蜜柑しかないですけども」
「ぬくぬくなのですー。ぽかぽかなのですー」
向かいに座って何やら溶けかけてるアンドロイドがぽわぽわとした語調で言った。
「しかし寒いとやる気起きないねー。炬燵からでられなーい」
「まぁ、たまには良いでしょう」
黄金の騎士は二個目の蜜柑を剥くと、今度はアンドロイドの口に放り込んだ。もにゃもにゃと気合いの抜けた感じにアンドロイドはそれを咀嚼し、最後にぷはぁと息を吐き出す。
「おいしいのですー」
「和むにゃー」
「こんなにとろけているアンドロイドもなかなか居ないですよねぇ・・・」
猫耳のようなパーツをぷるぷるさせるアンドロイドを見て、黄金の騎士は言った。炬燵に猫とは、何と似合うことか。そして猫と言えば、今は自分の膝の上である。
「我が主、ちょっともふもふさせて下さい」
「うにゃー、やめれー」
猫妖精のしっぽをもふもふする。若干嫌がるが、炬燵からは出たくないのであろう。黄金の騎士の膝の上で身体をくねくねうねらせて逃げようとする。勿論、そんな狭い可動範囲では逃げられようもないのだが。
「ぬくぬくぬく・・・すぴー」
「あ、ノエッタがシャットダウンした」
「平和ですね」
「だねー」
うとうとしていたアンドロイドが健やかな寝息を上げ始め、炬燵を中心とした和み空間は更にその癒し度を増したようであった。

黒天使は自分の部屋に立って緊張していた。何故自分の部屋に入るのにこれほど心拍数を上げねばならないのか、その理由は言われるまでもなく分かっていた。
「ヘリク、居るかしら?」
声を掛ける。返事は、無い。少し汗ばんだ手でドアノブを掴み、少しだけ扉を開けてみる。
そこには、灰色の髪を束ねた少女が一人。ベッドの上に座って目を瞑り、ぴくりとも動かない。
(瞑想中かしら。邪魔するのを悪いわね、出直そうかしら)
引き返そうとした黒天使だが、ふと考えがよぎった。純真な乙女心から来る些細な感情が。
(・・・と、隣に座る位平気よね?)
静かに部屋へと入り、そっと少女の隣に座る。様子を窺うと、少女はやはり全く動かない。静まりかえった部屋には、黒天使の少々ペースの速くなった心音が聞こえるだけである。
(い、勢い余って隣に座っちゃったけど、これどうしたらいいの!?)
顔が紅潮しているのが自分でも分かる。横目で少女を盗み見する。目を瞑って、動かない。ここまで近づいても何もリアクションが無い。深く深く集中している様子だ。
(・・・・・・す、少し位なら)
黒天使は思い切って、少女に寄り添ってみた。もう呼吸音まで聞こえる距離である。心拍数が更に上がる。
そしてふと我に返って嘆息した。こそこそと何をやっているのかと。
「・・・おい」
「きゃあ!?」
あまりにも不意の事だった。吐息もかかるような距離から声をかけられ、驚きの余り心臓が破裂しそうになった。冷や汗をかきながら黒天使は飛ぶようにして身を離す。
「へ、へへへヘリク起きてたの!?」
「何をそんなに慌ててるんだよ。何か用か?」
若干眠そうに目を擦って、少女は言った。寄りかかったことは何ら気にしていない様子である。そして冷静になれば、超が頭につくほどの朴念仁であるこの少女にそんな心配は無用だったと思い返し、黒天使はどこか落胆する。
そして力が抜けて扉に寄りかかったところで、背後の板が勢い良く跳ねた。
「おねえちゃーん!」
「きゃあ!?」
「おっと」
扉が開き、黒天使がバランスを崩す。それに気付いた少女は咄嗟に黒天使を抱きかかえた。
そして、扉を開けた者――赤い頭巾を被った女の子――は、抱きかかえられている場面のみを目撃して、
「あ・・・そ、その、おお幸せに!?」
「ちょ、ソティス!? 何言ってるのよ!?」
「何なんだ・・・。お前等ちょい落ち着け」
「だ、誰の所為だと思ってるのよー!!」
てんやわんやの大騒ぎであった。

「それで、何の用だったんだ?」
「あ、うん。るすとおねえちゃんがおやつ作ったからおいでって。・・・あの、れいらおねえちゃん」
「な、なにかしら」
「へりくおねえちゃんどんかんだからがんばって! おうえんしますっ!」
「・・・えぇ、頑張るわ。ありがと」

「行くぞ野郎共ーっ!」
「おーっ!」
「・・・野郎は居ない」
大雪だ。これでもかと言わんばかりの大雪だ。積もり積もって地面など見えはしない。庭にある池も雪に沈んで何も見えない。一面の銀世界。
そんな寒い場所に、三人。元気よく声を上げているのは、氷の翼を持った少女に、エプロンドレスを着た金髪の少女。それを残念な物でも見ているような目で眺めている、妖精さん一人。
「諸君、今日は雪である! ボタンちゃん、雪と言えば!」
「雪合戦や!」
「おしい! はいセンちゃん雪と言えば!」
「・・・雪かき」
「くぅー! 違う、違うんだよジョニー!」
もはやノリで叫んでいるような感じで、氷の少女は言う。雪と言えば・・・
「雪と言えば、雪だるまに決まっているでしょう!!」
「そうなんか!?」
「・・・アホドラゴンの常識を押しつけない」
「気にしないセンちゃん! さて、みんなで雪だるまを作るぜー! おっきくて可愛い奴! がおーって!」
「おー、楽しそうやなー。おっしゃやったるでー!」
「・・・風の子が二人。私は寒い」
氷の少女は勢い良く雪玉を肥大化させていく。それに負けじと金髪の少女も頑張るが、パワーが足りていない。見かねた妖精さんがこっそりとサポートをしている。何だかんだで妖精さんも楽しんではいるようだ。
「おっしゃーっ! ボタンちゃんのそれ、私の上にのっけるぞー!」
「リっちゃん頼んだでー!」
「・・・壮観」
結果として五メートル級の巨大な雪だるまができ、それをかまくらにしてみんなでお餅パーティをしたのは余談である。

おしまい。

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