個人作成したフリーズドライのボツリヌス菌感染可能性について

仕事関連

どうも、赤錆です。

先週わたくし、鯖のフリーズドライを製作しました。
そしてそれをパッキングしております。その後冷蔵庫保管していました。実は今度研究所に高校生が見学に来るので、フリーズドライのサンプルとして提供しようと考えているわけですよ。

さて。

それを会社の上司に報告したところ、「密閉保管してると最低最悪のボツリヌス菌が繁殖するかもしれないので注意してください」と。

……ふむ。怖いな。

そこで少し調査してみました。

まず、ボツリヌス菌について。名前程度は知っていますが、どういうものかは知りませんでしたので。

ボツリヌス菌とは、クロストリジウム属の細菌類であり、主に土壌や河川、海底中の泥の中に存在する菌類とのこと。まぁそういう土から、植物や魚なんかに移って食中毒になるっぽいですね。普遍的な菌のようです。

そして嫌気性の菌であるというのが今回一番問題となるところ。密閉保管していますので。

んで、やばいことにボツリヌス菌の毒素、70kgの人間が0.7μg程度摂取すると死ぬそうです……。1gあれば142万人は殺せる! 洒落にならんわ!! 怖い!!!

そ、それはそれとして、まず感染例がどの程度あるのかチェック。農林水産省のリスクプロファイルシートから引用させていただきます。(食品安全に関するリスクプロファイルシート:ボツリヌス菌

1984年6月 からしレンコン 36人感染(11人死亡)
1984年12月 ハタハタ・鮭のいずし 6人感染
1995年10月 鮭のいずし 6人感染
1998年7月 グリーンオリーブ(缶詰) 18人感染
2012年3月 あずきばっとう 2人感染
2017年3月 はちみつ(乳幼児) 1人感染

そういえば乳幼児のはちみつ摂取もボツリヌス菌でしたね。
最近はやはり衛生面がきっちりしているので見られていないようですが……からしレンコンの死亡11人がすごく怖いです。

さて、この事例がどのように起きたかというと、からしレンコンに関しては、滅菌を怠った上で真空パックし、常温保存していたのが原因のようです。
真空パックしてれば持つんじゃないの? と思われる方も多いでしょうが、ボツリヌス菌は嫌気性。要するに空気が無い状態の方が繁殖するのです。現在レトルト食品として流通しているものも真空パックですが、あれは120℃で4分間加熱殺菌しているんですね。

なおこの殺菌工程が無い場合には、レトルト食品としては認められません。常温ではなく冷蔵保存が必要になります。

さてさて。だいぶ怖いですが私のフリーズドライは大丈夫なんでしょうか。

まず今回は焼き鯖を使用しました。焼いているので、ボツリヌス菌はいても死んでいると思います。
また基本的に手袋をして切り分けたりしているので混入もあまりない……かな? ただその後の加熱殺菌はできていない……。

ただ完全にいないかと言われると疑わしいことこの上ないので、いると仮定しましょう。繁殖してなけりゃいいんです。

ではフリーズドライ化してパッキングしている、温度は冷蔵庫……8℃くらいかな、それで保存。

ここで農林水産省が出してくれている、ボツリヌス菌の繁殖条件を確認すると、

温度域:10~48℃(Ⅰ群)、3.3~45℃(Ⅱ群)
pH帯:4.0~9.6(Ⅰ群)、5.0~9.6(Ⅱ群)
水分活性:0.94以上(Ⅰ群)、0.96以上(Ⅱ群)

ここでⅠ群はタンパク分解菌、Ⅱ群はタンパク非分解菌となります。

さてここでクエスチョン。水分活性ってなんぞや?

ここはwikipedia先生にお聞きしました。引用させていただきます。(wikipedia:水分活性

水分活性とは……

水分活性(英: Water Activity、Aw と略される)は、食品を入れた密閉容器内の水蒸気圧(P)とその温度における純水の蒸気圧(P0)の比で定義され、以下の式によって求められる。

Aw=P/P0

純水の水分活性は 1.000Awであり、0.000~1.000Awの範囲で表される。

ふむ。なるほど分かる。この辺は私の専門分野なので。

そして幸いなことに、今回食品を密閉容器に入れた際の水蒸気圧(P)、計測してあるんです。これは僥倖。

今回の鯖のフリーズドライ、P=160 [Pa]です。馴染みのない方にはわかりにくいですが、かなりきっちり乾燥してると思ってもらって構いません。

そしてその温度における純水の蒸気圧(P0)ですが、計測温度が30℃でしたので、30℃の純水の蒸気圧ですね。となると、P0=42 [hPa] =4200 [Pa] でしょうか。

よって水分活性は、

Aw=P/P0=160/4200=0.038

となりますね。0.038ですって。

さて農水省のデータに戻りましょう。ボツリヌス菌の繁殖には0.94以上の水分活性が必要ということで。

……これは、菌は繁殖してないんじゃないか? パッキングした時に内部にあったであろう水蒸気を加味しても、0.94には到底届きません。また、これもwikipedia先生ですが、水分活性が0.6以下の場合細菌は繁殖しないようです。

なるほど、これは安心かもしれない。少なくともボツリヌス菌は大丈夫。一応農水省は冷蔵保存を推奨してますが、繁殖温度が3.3℃以上ってのもあって怖いので冷凍に切り替えましょう。

と、いうわけで何とかなりそうです。ただやっぱり怖いので「自己責任で!」と言っておきましょう。
いやそんなこと言っても問題が起きれば責任は取りますが……えぇ。

そんな感じ。皆さんも食中毒には気を付けましょうー。

ではー。

追記:2021/5/11
ボツリヌス菌の食品安全に関するプロファイルシートが更新されていたため、リンクを更新しました。

コメント

  1. @の肉 より:

    ブログの内容が博識で読んでて楽しいです。これからも更新ヨロシク( ´ー`人´ー` )ネッ

  2. 赤錆 より:

    > @の肉樣
    コメントありがとうございます~。図らずも研究職になってしまったので、それっぽいことも今後も書いていきたい所存です。
    しかしごった煮なブログでありますので、あまり期待せずお待ち頂ければ幸いですよー。

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